第9章 婚約者は誰?
本家の人間と同じように見えるなんてそんな発言をされて、他の分家の方に聞こえてたらどうしよう。
けど、まだ挨拶は始まっていなかったし、分家の方をお通しする時も特に冷えたぎる空気は感じなかった。
あたしはずっと下を向いて会釈してたけど、何人か「綺麗ね」「お着物素敵ね」って仰ってた気がする。
そんな事これまでなかった。しかも悟くんとお揃い仕立ての着物をそんな風に言うなんて考えられない。はとこの楓様も、今回は何も文句を言ってこなかった。
遺言の内容は本家にしか開示されていないと思うけど、歴代続いている遺言なら、ともすれば当主と同世代のご親戚たちは婚約者は誰かは知らずとも核となる部分はご存知なのかもしれない。
悟くんに遺言が開示されて、本家だけでなく一部の分家の方も何かあたしに対して変わったような気がする。
やっぱり何かが違う。それしか言えないけど、妄想は妄想じゃないのかもしれない。