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【R18】You belong with me 【赤井秀一】

第73章 アイラブユーを探してる




これを入手した時の記憶が全く思い出せないわたし。
うーん。と首を傾げる様子を見て、赤井さんは少しだけ悲しそうに笑って話を変えた。


「身体はどうだ?」

「え?」

「怪我の具合はどうだ?」

「あぁ…昨日よりも痛みは引いてきてます。」

「そうか。良かったな」


そう言って、赤井さんはわたしの頭にポンっと手を置いた。

ふわりと薫る彼の袖口の匂いが、妙に鼻腔をくすぐる。

頭を撫でられた時に心臓が大きく跳ねたのが自分でも分かった。

それが自分でも何故だか全く分からず、胸の奥がむず痒い。
モヤモヤを晴らすためにリンゴのお皿を指差して言った。


「それ、わたしも食べたいです」

「…いらないんじゃなかったのか?」

「それは昨日でしょ?今日は食べたいの」


昨日初めて会った人にそんなわがままを言うと、彼はまた笑ってフォークに突き刺したリンゴを口元に持ってきた。


「はい」

「…」


てっきりお皿ごと渡してくれると思いきや、口元に差し出されたリンゴと赤井さんの顔を交互に見て、悩んだ挙句にそのリンゴを恐る恐るかじってみる。

シャク…とみずみずしい音がした後に甘い味が口に広がった。


「…ん。ほんとだ。甘いー!」


思わず食いしん坊が表に出たわたし。
満面の笑みでリンゴを喉に通すと、赤井さんはまたわたしを見て笑った。


「美味そうに食べるのは、相変わらずか」

「え…」


相変わらず?
その一言もひっかかったけど、もっとひっかかったのはやっぱり彼のこの表情。

笑っているのに、どうして悲しそうなの?


次の日も、その次の日も、赤井さんは毎日わたしの病室に来た。
わたしは、毎日見せるその儚げな笑顔の意味がわからないまま、ただ時間だけが過ぎた。




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