第13章 花戯れ
「療養中の菖蒲ちゃんへの接触は、松乃を通し、療養の妨げにならないよう配慮してほしい。面会が必要な場合は、静代殿か実田殿の同伴という条件とさせてもらうよ。これで、異論はないね?」
「承知いたしました」
鬼という”未知な存在”に娘を丸投げしてしまう事は静代にとってはどこか一抹の不安を伴うものではあったものの、
ようやく普段よりも柔らかな雰囲気を纏い笑みを浮かべている菖蒲を目の当たりにして、今の環境が彼女の心の安寧であり完治に向けて最適な場所なのだと改めて理解した。
「そうだね。これからも、時々はこちらに顔を出すとしよう」
実田も同じように考えて、なお、菖蒲と静代の間に入り二人を支えていこうと決心したのだった。
華雅流の再興は決定し、菖蒲の療養など、今後のことが決まると、実田と静代は寺院を後にした。
松乃と共に、二人を送り出すと菖蒲は部屋を退室する。
彼女の後姿もまた、どこかホッとした様子で談笑するのをどこか感慨深く眺めていた。