第12章 帰還と安穏
「静代様も同じようにお考えのようでしたよ。
それでも、あなたの意思を尊重して送り出された。
そして、母として、見殺しにはできなかったし
自らも、罪を犯してでもあなたの命が大事だった」
静かに語るその目にはじわりと涙がにじんで、声は震えていた。
「童磨様もまた、送り出した花が穢らわしく踏み潰されている様に激しい怒りを覚え、無意識に力を溢れさせるほどだったのです」
わたしの目をしっかり見つめて、涙を流しながら松乃さんの両手がわたしの肩に置いた。
「強く生きて。皆さんが、あなたが笑顔でこころから天の祝福を受けて舞う姿を見ていたいのです。
決して、ご自分のせいでと思ってはなりません」
自分で自らかけていた呪縛も
家元から植え付けられていた呪縛も
ホロホロととけていく気がして
力が抜けたまま、涙が幾重にも筋を描いていった。
「わかりましたね?」
暖かい声が心を包んで、心の奥で消えていた炎が灯るような感覚がした。
「松乃さん」
「はい」
「わたしはまた、舞うことができるでしょうか…」
「必ずや」
両手を優しく握られて、その力強さは心に以前のような闘志を宿す。
わたしは、まだ、生きなければならない。