第19章 一世一代
憔悴する彼女の姿を見かねて虎杖が声をかける。
「渡辺、その服、返し辛いなら俺が返しとこうか?伏黒と部屋隣だし」
「ぇ……と、その、……っ」
その時、不意になずながポロリと涙を流した。
それを見た虎杖は一気に気まずくなる。
「えっ、ちょ、マジでごめん!余計なこと言っちまったな……」
「ち、違うの……!こっちこそ、ごめん、いきなりこんな……困らせちゃうよね」
すぐ止めるからと謝るが、その言葉とは裏腹に、なずなの目からはポロポロと涙がこぼれて止まらない。
そして、きつく結んだ糸を少しずつ解くように、なずなはぽつりと言葉を紡いだ。
「……できれば自分で返したい、返す時にお礼と……あと、謝りたい……でも、どうやって話しかけていいか、分からなくて……」
自分の気持ちを吐き出すにつれ、なずなの嗚咽も大きくなっていく。
「私、すごく嫌われちゃったから……っ、わ、私なんかに、声をかけられるのも、伏黒くんは嫌なんじゃないかって……!顔も、見たくないんじゃないかって……っ」
想像するだけで身が引き裂かれそうだった。
でもそれは自分が招いたことで……
「わ、私はそれだけのことをしたの、伏黒くんは、任務の時も授業の時も……これまで数え切れないくらい助けてくれてっ、それなのに、私は伏黒くんのこと、すごく傷つけた……!だから、私には伏黒くんを想う資格なんてない……っ」
「資格とか、そういうもんじゃないでしょ!大体、伏黒から直接アンタのこと嫌いって言われたわけ?」
しゃくり上げるなずなは野薔薇の問いかけにふるふると首を横に振る。
「だったらまだ分かんないじゃない!」
「で、でもっ、聞くのが、すごく怖いの……ひ、被害者面なのは、分かってるっ、伏黒くんのこと傷つけたのは私で、嫌われても当然……そ、そんな私が何を今更って思うかもしれない……だけど、こ、怖くて仕方ないのっ」
なずな自身も弱りきっていて、どんどん自分を卑下して、傷つけていく悪循環。