第28章 断章 浜辺の誘惑
「真希さんは自分が魅力的すぎることをもっと気にしてください!イマイチ無防備というか……いや、それがいいところでもあるんですけど!」
真希に迫る勢いで忠告する野薔薇になずなもうんうんと激しく同意を示す。
結局、後輩2人に根負けした真希は上にTシャツを着ることにしたのだが、野薔薇もなずなも納得いかないといった顔だ。
「……野薔薇ちゃん、私の気のせいかな?真希先輩、さっきより色っぽくなってない?」
なずなが野薔薇に耳打ちする。
野薔薇もぐっと唇を噛み、否定できない。
それもそのはず、Tシャツを着てもスタイルの良さは隠れていないし、なんならうっすらとビキニが透けており、長めの裾からもチラチラと見えるため、どうしても下着を連想してしまう。
海に入って濡れた暁にはもっと透けるし、肌に張りつくから色気が大変なことになる。
「もっと色の濃いTシャツ持ってきてもらうんだった……!これは想像できてなかったわ」
「ど、どうしよう?今更脱いでくださいって言えないよ」
「こうなったら真希さんに変な虫がつかないように全力で……」
しかし、真希の前でコソコソ話は無意味だった。
「丸聞こえだぞ」
「ひゃい!?」
2人がビクッと肩を揺らして真希を見ると腰に手を当て、肩をすくめている。
「す、すみません、け、決して下心があるんじゃなくてっ、その……!」
慌てて言い繕うなずなだが、逆に下心があると白状しているような言い訳に野薔薇から強めに背中を叩かれた。
「真希さん、私達が言いたかったのは……」
なずなのフォローに入る野薔薇もまたテンパっており、必死な後輩2人に真希は笑いが漏れる。
「全部聞こえてたから分かってるよ。要は男に声掛けられても無視しろってことだろ?けどそれは野薔薇達にも言えることだからな?」
「?」
疑問符を浮かべて顔を見合わせる2人に真希はやれやれと頭を掻く。
「分かってねぇな。野薔薇もなずなも十分似合ってんだから、変な男に気をつけろって話だ」
「!!」
2人は思わず赤面して、野薔薇に至っては射抜かれたようにぎゅっと胸を押さえた。