第28章 断章 浜辺の誘惑
グルグルと悩み始めたなずなをよそに真希は肩をすくめる。
「本人がいいならそれでいいだろ。そんなこと言ってる野薔薇こそ決まったのか?」
「まだでした!なずなもちゃんと選ぶのよ」
そう念押しした野薔薇は一旦離れて自分の水着を選びに行き、真希も会計へ向かってしまい、途方に暮れたなずなだけが取り残される。
ど、どうしよう……?
こんな露出の多い水着なんて着れる自信も無ければ着れる体型でもない。
でも野薔薇ちゃんの言う通り、今持ってる水着じゃ埋もれちゃう……!
「どんな水着をお探しですか?」
立ち尽くすなずなに手を差し伸べたのは店員の女性だった。
「あの、今度学校の同級生と先輩と海に行くんですけど、スクール水着しか持ってなくて……でもこういうビキニを着る自信は無くて……」
「心配しなくても大丈夫、似合いますよ。海ならビキニを着ている方も多いですから初めてでも気にならないと思いますし」
「それじゃあダメなんです……!」
「?」
するとそこへ会計を終えた真希が戻ってくる。
「なずな、私はここで待ってるから迷子になるなよー」
「あの人が一緒に行く先輩なんです。同級生の子も私とは比べものにならないくらいの胸で……!」
「あぁ……そういうことでしたら、あちらの方がいいかもしれませんね」
店員も思わず真希のスタイルをまじまじと見た後、なずなの必死な表情からビキニを拒む理由を察し、別のコーナーへ案内する。
そして見せてくれたのは白いフリルのオフショルダーの水着。
「これはいかがですか?華奢に見せてくれますし、フリルで胸のボリュームアップもできます」
「華奢を通り越して貧相に見えちゃったりしませんか?そ、それに私、胸がないから、その、ずり落ちちゃうかも……」
心配のしすぎとあまりの自信の無さに何を言われてもマイナスに受け取ってしまうなずなに店員も内心困った。
ここへ水着を買いに来るような子でここまでマイナス思考の子も珍しい。