第26章 断章 優しい優しい帰り場所
身体が浮き上がったのを感じたのか、なずながゆっくりと身じろぎした。
うっすらと目を開け、甘えるように伏黒の胸に頬をすり寄せている。
しかし、瞼は重たいらしく、懸命に上げようとしているのに、どんどん閉じてしまっていた。
なずながこんな風に甘える様子は、普段なかなか見られない。
とろんとした瞳で見上げてくる彼女が愛おしくて、思わずその額に口づけた。
温もりを感じたくて、彼の胸に頭を預けていたら、額にやわらかい口づけが落とされる。
「めぐみ、くん……?」
「なずな、おかえり」
「うん、ただいま……!」
ぎゅっと抱きしめられ、今度は唇に甘いキスが降ってきた。
前はいつだったっけ?と思うくらいに久方ぶりのやわらかい感触。
決して深くはないけれど、お互いの体温を確かめるようにゆっくりと長めに触れ合う。
ああ、今すごく幸せ……
名残惜しい気持ちを残して、合わさっていた唇が離れる。
まだ少し温もりが残るベッドの中、2人は幸せを噛みしめるように身を寄せ合って、眠りについた。
―続―