第26章 断章 優しい優しい帰り場所
ぽかぽか
ぽかぽか
あったかい―……
身体を包んでいる泡はいい匂い。
髪も泡だらけになっている。
少し強めの力で、大きな手が行ったり来たり、マッサージされているみたいで気持ちいい。
しばらくすると、ちょうどいい温度のお湯で泡が流された。
あとはゆっくりお湯に浸かりたい……
意識がふわふわになりながら、浴槽の縁に手を持っていくと、大好きな手が私の手を掬い上げた。
「なずな、それはやめとけ」
とても久しぶりに聞く穏やかな低音。
電話越しではない彼の声が優しく届いた。
耳元でそんな風に囁かれたら、うなずくことしかできない。
「……んぅ、……わかっ、た……」
お風呂から出て、ゆっくり身体を拭いている間に、ワシワシと髪を拭かれる。
その後、シャワーを浴びて温まった身体が冷える前に、肩に寝間着を羽織らされ、促されるまま袖を通す。
ほかほかと温まったせいか、一段と眠気が強くなってきた。
……あとは、眠るだけ……
大きな手に引かれて、寝室へ歩いていく。