第25章 断章 呪具女子!
翌日―
未だ緊張気味のなずなが真希と共に向かった先は都内のクリニックだった。
開院前の時間帯、補助監督が降ろした帳をくぐり、2人は夜闇に包まれた建物に入る。
少し進むと、ウゾウゾと蠢く影が数体。
夜の帳に誘われて出てきた呪霊だ。
真希は大刀、なずなは鬼切をそれぞれ構える。
「好きに動けよ。私が合わせる」
「は、はい!」
なずなはうなずくと、呪霊へ向かって大きく踏み込んだ。
始めに目についた3体の内の1体に狙いを定め、鬼切を振るう。
真希はなずなの背後から一太刀で2体を祓った。
続け様に待合室の椅子に隠れていた1体も祓う。
そしてなずなが別の呪霊に向かうと、真希もそれに合わせて標的を切り替え、なずなを邪魔しそうな呪霊が行動する前に切り伏せていた。
流れるようなその動きになずなは感服しきりだ。
す、すごく戦いやすい……!
私の動きの癖を全部分かってるみたいな動き、欲しいところに既にフォローがある。
踏み込みの1歩にも無駄な動きがなくて、一番効果的な一太刀で呪霊を祓ってる。
その強さに引っ張られて自分も強くなったような錯覚さえしてしまいそうだ。
周囲の長椅子や受付カウンターなどを傷つけないよう、なずなは変則的に立ち回り、真希もなずなの逆サイドをカバーするよう効率的に動く。
長物を扱う真希の方が狭い場所に不向きなはずだが、そんなものは微塵も感じさせない流麗さ。
目の前の呪霊に集中しないとつい見惚れてしまう。
懸命に思考を切り替え、素早く壁を走る三級呪霊めがけて鬼切を翻し、きれいに両断。
これでなずなが祓ったのは3体、真希は4体祓い終えて建物全体の呪いの気配も消え去った。
「さっきので最後だな」