第54章 12月.2(松川)
約束の駅は、私が利用する駅より断然人が多くて
なかなか一静さんが見つからない。
「ん~。私、改札間違ってるんですかね?」
『いや、合ってると思うけど………
とりあえず俺が動くから、そこで待っててくれる?』
「すみません」
電話越しのお詫び
『ううん。俺が奈々ちゃんの最寄駅行けばよかったね。
こっちまで出てきてもらっちゃってごめんね?』
「なんで一静さんが謝るんですか。
誘ったの私だし………」
この人の言葉は、
"あの人" を思い出させる。
ただ、もちろん違う人。
「…………あ!一静さん、そこで止まってください!」
『え?』
突然私に止まってと言われて、通路のど真ん中で立ち止まって
少し動揺している一静さん。
他の人より頭ひとつ出ているから、
その表情もよくわかる。