第52章 11月(下旬)
誕生日の日のお昼間は予定通り
さおりにランチに付き合ってもらった。
事前に「私、誕生日です!」と宣言しておいたから
プレゼントまで準備してくれていた。
狙っていたクリスマスコフレ
さすが
好みをわかってらっしゃる。
傷心バースデーに付き合わせてしまったお詫びもあわせて
次のさおりの誕生日は期待しておいて!と伝えておいた。
そして、さおりとのランチ中
一静さんから
【朝起きれなくてごめんね】
と連絡があった。
飲んでいる時に交換していた連絡先
そのメッセージを見て思わず口元が緩んでしまった私を
さおりは見過ごすことなく、
そしてそのまま取り調べられた。
その時にさおりに伝えた言葉が
「昨日初めて会った人だけど、
なんか好きだなって思った」
それを聞いてさおりは、
ちょっと安心したって言ってくれた。
………そりゃそうだよね。
さおりにとっても黒尾さんは上司なわけで。
だからさおりには
黒尾さんとの最後は、あまり詳しくは話せてなくて。
詳細を話さない理由は、さおりも理解してくれている。
ただ、だから
余計に心配をかけてしまったかもしれない。
それでも私の話を聞いてくれて
本当に感謝。
一静さんとはワンナイトでも
私が自暴自棄になっているわけでもないし
大人だし、そういう経験もいいんじゃない?って
別に一静さんのことを、好きとか
そういうのはない。
昨日初めて会った人だし。
朝、黙って出てきたのは私だし
それきりでも別によかった。
だけど、こうやって
ごめんねって連絡をくれて
それからはたまに、連絡を取る関係に。
また飲みに行かない?とお誘いを受けたけど、
どうしてもその日中に終わらせなければいけない仕事があって
その時は残念ながらお断りした。
ちなみに、
誕生日の日
黒尾さんからきたメッセージへ
返信は、しなかった。
というより
まだ、できなかった。