第37章 スルタンコラボ企画 序章 お相手:冨岡義勇
神経を極限まで研ぎ澄ませる
一秒が
こんなに長いと感じた事は無かった
不思議な感覚だった
焦っているのに 堪らなく
それなのに どこか夢でも見てるように
現実味が無くて…
一秒 がゆっくりゆっくりと
時間が止まっているかの様にも感じる程に
ゆっくりと 流れていて
ギリッ 開いている方の目に意識を集中させて
闇の中を掛けて行く その後ろ姿に向けて
弦を引き絞って行く
次の一撃で仕留める
狼が地面を蹴って 大きく飛んだ
それに合わせて 小野寺が
矢を放った
コマ送りの様にゆっくりと
その光景が流れて行く
狼が飛びかかったその先には
羊達と 悠斗兄さん
それから お日様みたいな
色の髪をした獅子の様な人が居て
剣を抜いて構え合う
2人の間に
ドサッとその狼の長の巨体が倒れ込んだ
その頸には後ろから射た矢が刺さっており
その後ろから来たのは
まだ年若い娘だった
その背に月の光を受けて
馬の手綱を握りしめていた
髪を高い位置で結い上げた娘の
右の目は
空に輝く月よりも更に眩く
金色に輝いていた
「君が、この狼を仕留めたのか?」
「小野寺?父さんと
一緒じゃなかったのか?」
先程まであれほど殺気立っていた
悠斗からは嘘の様に殺気が引いていて
元の柔和な彼に戻っていた様だった
それに 小野寺と呼んだか
彼らが頑なに俺達から遠ざけようとしていた
双子の妹のひとりか
杏寿郎が小野寺の方へ向き直る
「お嬢さん、君は
真に星の娘で違いないか?
その金色の目は本物か?」
「あの、…どちら様ですか?」
まぁ当然か突然に湧いて来た
それも自分の兄と剣を突き合わせていた
謎の男にそんな事を聞かれて
ほいほいとは答えてはくれんか
「俺としたことが、礼儀がなって
いなかったようだな。これは
度重ねて、お詫びしよう。
俺の名は、煉獄杏寿郎。君の名を
聞いても構わないだろうか?金色の瞳の人」
煉獄…と言う苗字を名乗ってもいいのは
この国では唯一 スルタンの一族のみ
王族のみが名乗る事が許されている名だ
「って、もしかしてと思って
聞いたりするんだけど…、もしかして
スルタンの、息子?だったりするの?」