第14章 蜂蜜
ー穂波sideー
わたしが迎えに行ける土曜日に合わせて研磨くんが来てくれた。
約半年ぶりの研磨くん。
うれしい、うれしい、うれしい。
何回言っても足りない。
嬉しい!
とはいえわたしもカズくんも普通にいつもの日々を過ごすので、
来てくれるとはいえ良いのかな?
はじめての海外旅行?が、初めてのアメリカ滞在が、そんなので良いのかな?って思って電話でも聞いた。
そしたら、目的は穂波に会うことだから良い。
って、普通に、研磨くんの調子で帰ってきた。
それもそうだな、って思った。
わたしが同じ立場でもそう思う。
非日常の場所で日常の延長のような時間を過ごすことは、大好きだ。
それにこの上ない贅沢だとも。
だから研磨くんにとってのそれは、家にいる、ことが多いだろ。
それも良いじゃない。 それが、良いじゃない。
そう思った。
空港を出て1時間半くらい。
家に到着。
それまでの間車内で研磨くんは、
寝ることなくぼんやりと外を見たり、わたしのことを見たり、していた。
『はい、無事に着きました』
「…ん、穂波運転ありがと」
『どういたしまして …じゃあ』
シートベルトを外した研磨くんが身を乗り出して。
その気配に、影に、 わ。 となっていたのも束の間。
唇が触れてた。
「触りたくて仕方なかった。 あの、タクシーの時くらい、我慢した」
『…ふふ、あのホテルに行った時?』
「うん」
『それはそれは…』
すごいむらむらだ。
あの時わたしもだったから分かる。
『…ひとまず、家に入ろっか』
「ん、」
『あのね、お弁当にしてあるの、ごはん。
お昼過ぎちゃうし、でももしかしたら家で食べるって言うかもなって思って。
お味噌汁だけさっと仕上げてすぐ食べれるよ』
「…そっか、いいね。 ありがと。 ていうか」
『……』
「家、でかいね」
『ね、大きい、の概念が違ったりするよねぇ』
なんて言いながら、どうにかこの場を切り抜け?る。
研磨くんのむらむらを想像した途端、
無意識に抑えていたわたしの中のむらむらが爆発しそうだった。