第12章 移ろう季節
ー歩side
2月13日
部活が終わって真っ直ぐ家に飛んで帰ってきた
なんせ明日はバレンタイン
蛍と付き合って初めてのバレンタイン
蛍が好きなショートケーキを作るために買い揃えてた、こだわりの材料をキッチンの作業台に並べる
最近部活が終わったら、すぐ帰ってたのにも理由があって
美味しい苺農家を求めて、チャリで探し回ってた
兵庫にいた頃は御用達の農園があったけど、コッチに来てからはよく分からんくて、連日通い詰めてついに発見した
「お姉…今回めっちゃ気合い入ってんな〜この苺めっちゃ美味そう!食べていい?」
三女がキッチンに乱入してきた
「あかん!これはケーキに使う"紅ほっぺ"やから!食べるんなら、冷蔵庫にある"あきひめ"食べて!」
「いや、品種で言わんといて!分からんから」
「分かるやろ!"紅ほっぺ"は固くて酸味があるからケーキに向いてるけど、"あきひめ"は甘くて柔らかいから…
「はいはい分かった分かった」
妹は面倒臭そうに答えると、冷蔵庫を開けて苺を取り出した
「てかめっちゃすごい材料やけど、何人分作るん?」
「え、いちにーさん…15人ぐらい?それと蛍の分」
「へー…蛍ねぇ…こないだまでツッキー言うてたのに」
妹がニヤニヤしながら言うてくる
「ちょ、うるさいわ」
「ほんで蛍くんには、明日家来てくださいってちゃんと言うてあるん?」
「…家?なんで」
「は?お姉まさかショートケーキ、チャリのカゴに乗せて行くつもりやったん?!」
「…あ」
「いやほんま自分、そういうとこやで」
妹が呆れながら言う
確かに…
チャリのカゴにショートケーキも盲点やったし、そもそもそれいつ渡すつもりやったん!て話で
朝っぱらからホールのショートケーキ渡した日には、蛍は1日中ケーキ片手に過ごすことになる
「言うてくれてありがとう、あとで蛍に連絡するわ」
って言いながら、チームメイトへのブラウニーを作ったり、潔子さんに感謝の気持ちのラッピングしたり…
そしてもちろん蛍のためのショートケーキもフワッフワに焼き上げて…
気づいたら日付が変わってた
「やっっば!もうこんな時間やん!」
私は慌ててお風呂に入って、そのまますぐに寝てしまった
…蛍、喜んでくれるかなぁ