第6章 日常
侑のこと、好きって自覚したんは中学入ってから
いつも一緒にいたはずの侑と治やったのに、妙に侑と話すときだけ、恥ずかしいようなむず痒いような気持ちになった
それは侑も同じやったみたいで、てかそれより前からずっと好きやったって言うてくれて、私が中2なりたての時に、付き合うってことになった
いつも一緒におったし、お互い目立ってたから、先生とかも知ってるような有名カップルやった
侑が高校行って、それでも私らは家族ぐるみで仲良くて、母ちゃんは婿養子に来てもらうって張り切ってた
やけどその冬…
忘れもせーへん
当たり前のように侑がおる稲荷崎を受験した帰り道、稲荷崎の生徒に声をかけられた
今日は入試で学校休みのはず
わざわざ来たってこと?
「あんたが歩ちゃん?」
女子高生は中学生の私からしたら、ひどく大人に見えた
ほんまは1年はよ産まれただけやのに
「そうですけど」
「侑の彼女なんやってな?まさか侑の彼女が中坊とは」
「去年は侑も中坊やったんで」
「はぁウザ、単刀直入に言うわ。侑と別れて」
「…侑に言うたらどうですか?」
「そんなん私が悪い女みたいやん」
「ちゃうんですか?」
思いっきり睨みつける
タッパは私のがある
たかが1年はよ産まれただけで
調子乗んな
「言い忘れてたけど…私、侑とそーゆー仲なんよ」
「は?」
「お子ちゃまには分からんかな?そーゆーことヤってるってこと」
何なんその嘘?
そんなん侑に聞いたらすぐ分かる嘘やのに
その日、いつもみたいに宮家に行った
あの人が言うたことは嘘やろうけど、なんかモヤモヤする
「おう歩、今日入試やったんやろ?どやった」
「まぁ受かるわ」
「お前賢いもんな」
「侑よりはな」
「ほな春からは一緒に高校通えんねんな、楽しみやな」
「…」
「歩?」
「侑、なんか私に隠し事してへん?」
「え、何?」
「…今日入試の後に、在校生の女の人に話しかけられた」
「今日?俺ら休みやのに?」
「だからわざわざ私に会いに来たんやと思う、私の名前も知ってたし」
「え…」
侑の顔が引き攣ってる
何?なんか心当たりあんの?
「侑と別れろって言われた」
俯きながら言う
膝に置いた手の甲に涙が落ちる