第2章 きっとこれは恋じゃない
私が夏休みまで通っていたキスミ学園は、亡くなったお父さんが通っていた学校だった。
『お父さん!私お父さんと同じ学校受ける!頑張るから!』
病気で入院していたお父さん。
お医者さんから言われていたのは持ってあと数ヶ月。
そんなの嫌だ。
少しでも長く生きててほしい。
少しでも長く、お父さんと一緒にいたい。
必死になって考えた私は、偏差値が高くて、頑張っても入れるかどうか分からないと言われていた学校を受験する決意をした。
お父さんと同じ学校。
もし入れたら、嬉しいって言ってくれるかな。
私が苦手な勉強頑張ったら、お父さんも治療頑張ってくれるかな。
そしたらもう少しだけ長く、お父さんと一緒にいられるかな。
そんな願いを詰め込んで…
『本当かい?嬉しいなぁ!柚葉が頑張るなら、お父さんも頑張るよ』
頑張っている人にもっと頑張って欲しいなんて、今思えばなんて酷い事してしまったんだろう。
それでもお父さんは嫌な顔ひとつせず、私のお願いを聞いてくれた。
一緒に頑張ろうって、約束してくれた。
『柚葉、よく頑張ったね。偉かったなぁ、おめでとう。お父さん嬉しいよ』
合格発表の日、お父さんは笑顔いっぱいに喜んでくれた。
その後、お父さんは私の入学式を見届けてから、お空へと旅立って行った。
「蜜璃、柚葉は…承知の上だ」
「そうだろう?」と、私の気持ちを察してくれた伊黒さんは、さりげなく蜜璃ちゃんに諭す。
「え?…あっ、そうよね!やだ私ったら… 柚葉ちゃんごめんね!」
伊黒さんに言われ気付いた蜜璃ちゃんは、「ほんっとうにごめんなさい!」と、頭で机割ろうとしてる⁈ぐらいの勢いで、おもいっきり頭を下げた。
…ねぇ、今『ゴッ…!』って音したよね⁈
おでこ、大丈夫かなぁ…
「蜜璃ー!!」と、大慌てで伊黒さんが蜜璃ちゃんを起こすと、蜜璃ちゃんのおでこは綺麗なまぁるいたんこぶが出来上がっていた。
伊黒さんは青ざめながらもよしよしと蜜璃ちゃんを撫でた。
私なんかにそんな事、しなくてよかったのに。
ごめんね蜜璃ちゃん、おでこ…
あぁ…