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[BLEACH] 世界を超えて

第9章 生命と選択


「白哉。あの―…話が、あるの」

 美穂子は白哉の腕の中で、ぽそりと呟いた。
 白哉は腕の中にいる愛しい妻を、少しだけ腕の力を抜いて顔をあげさせた。

 そこには、少し言い難そうに、小さく唇を動かす美穂子が見えた。

「―……し…ん」
「すまぬ、聞こえなかった」

 もう一度、と耳を傾ける白哉に、美穂子は頬を染めた。

「妊娠、したの」

「! 子が…いるのか」

「ん……。あの、産んでも…いいかな」

「無論だ」

 断る理由などどこにもない、と強く抱きしめる白哉に美穂子は涙を一粒流した。

 白哉は歓喜に震えそうになる自分を懸命に抑えていた。
 前妻は流魂街出身で子という愛の先にある命を授かることは最初から難しいとわかっていた。
 そして、美穂子にもまたそれは望んではいけないのだとずっと思っていたのだ。

 それがどうだ。
 夫婦と言う形で、美穂子を自分のものにした瞬間に、願いが叶うなど。
 これを喜ばずして、何を喜ぶと言うのか。

「美穂子、身体を大事にせねばな」

 美穂子一人の身体ではないのだ。
 白哉の言葉に、美穂子は頬をほんのりと赤らめて頷く。

 それがひどく可愛らしくて。
 白哉はそっとその唇に口付けた。



『願え、加護の与えし先を』



 ぴくりと、美穂子の肩が震えた。
 白哉がそっと唇を離すと、美穂子は白哉の腕の中から泉を見詰める。

「美穂子、どうした。体調でも悪いか」

「―…ううん。そうじゃなくて…、なんでもない」
「?」

「本当に、なんでもない」


 幸せのはずなのに―…なぜか、言いがたい不安を美穂子は感じた。
 それが取り越し苦労だといいと、思いながら… 美穂子はぎゅっと白哉の背中に手を回して抱きしめた。




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