第9章 生命と選択
着いた先は、白哉と出遭った―…泉。
月の光に照らされたそこは、どこか幻想的だった。
考えてみれば、美穂子はこの場所をきちんと見たことがなかった。
最初にここに来たときは意識を失っていたし、あえてここに足を運ぶこともなかった。
(ここから、私は来たんだ…)
すべての始まりの場所。
なんだか、まるで夢のような気すらしてくる。
美穂子がじっと泉を見つめていると、白哉は静かに目を閉じた。
「お前と出会った時のことを―…私は鮮明に覚えている」
白哉の声に、美穂子は隣に佇む白哉を見た。
白哉は美穂子に見つめられていることを知ってか知らずか、一度閉じた瞳を開けると空を見上げた。
「あの時も美しい月夜で、その月明かりに照らされた泉は神秘的にすら感じていた。そして―…水面から現れたお前を見た時、確かに伝説を思い出したのだ」
流れ落つる月夜の光に導かれ
女神が降臨す
鮮やかなる輝きと共に
紡がれし運命の指し示すままに輪が回らん