第9章 生命と選択
四番隊にまで迎えに来てくれた冬獅郎は、美穂子を朽木家へと送り届けた。
乱菊から体調が悪いことを聞いていたのか、帰り際には「もし辛いようなら連絡をくれ。十番隊の仕事はなしにしてもいい」と言ってくれたのが嬉しかった。
同時に、卯の花の言葉に―…美穂子は迷っていた。
(子供は―…降ろしたくない)
これは美穂子の願いだ。
どんな形にせよ、愛する人の子を授かった以上、身勝手に降ろすなど考えもしてない。
けれど、同時にそれは愛する人を強制的に縛ってしまうことにならないのだろうか。
美穂子の中で、それだけが不安だった。
白哉が美穂子を愛してくれているのは、短い使いの中でも理解しているつもりだ。
けれど、それが夫婦という間柄となると話は別で。
夫婦になるということは―…下手をすれば、彼をもう一度一人にしてしまう可能性があると言うことだ。
(前妻を失っている白哉に、もう一度その思いをさせるなんて…)
そんなことをできるわけもない。
「白哉……」
美穂子は、部屋で静かに涙を流した。