第4章 瀞霊廷の生活
「美穂子」
がらりと開けた資料室の奥でごそごそと動いている美穂子を見つけて、白哉は美穂子を呼んだ。
すると、書類を抱えて美穂子は白哉に笑いかけた。
「あ、白哉さん。今戻るところだったんです」
思いのほか多くて時間がかかちゃいました、と笑いながらこちらへ歩いてくる美穂子を白哉はじっと見つめた。
美穂子が瀞霊廷に現れて二ヵ月ちょっと。
お互いを名前で呼ぶ程度には、親しい仲になった。
白哉の監視下といっても、彼女を必要以上に束縛しているわけではない。
六番隊舎であれば、美穂子の霊圧で居場所はわかる。
家に戻れば、美穂子に与えた部屋が白哉の隣ということもあって、昔のように結界の必要性はなかった。
それで十分だと考えていた。
一日のほとんどを自分の近くにいるのだから。
けれど、これが十番隊の仕事が入るようになったらどうなのだろうか。
十番隊の隊舎は遠い。流石にその距離を網羅する範囲で霊圧を探り続けるのは現実的ではない。
かといって、十番隊の仕事を六番隊へ運ばせるのも非効率的だろう。
監視という意味なら断るべきだろうが、総隊長が許可を出したというのなら監視の目が白哉以外でも構わないという判断なのだろう。
「どうかしたんですか?」
美穂子は白哉の前で足を止めると、首を傾げた。
「…十番隊から、手伝いの依頼がきている」
「手伝い…って、書類整理とかってことですか?」
「あぁ。給金も出る」
「え、そうなんですか」
美穂子は目を丸くして、うーんと唸った。
白哉はそんな美穂子を見て、少し視線をうろつかせた。
「美穂子、問うていいか」
「え、はい?」
考え中だったのか、美穂子はきょとんとした顔で白哉を見た。
「六番隊からも―…給金を出すと言ったら、どう思う?」
白哉の質問に美穂子は笑顔を浮かべた。
「私の仕事ぶりをご評価いただいた結果なら、喜んで受け取ります」
「…そうか。なら、他の隊員と同じ日程で支払おう」