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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃/猗窩座・狛治】

第15章 蓮華




次に目が覚めた時、見慣れない天井と甘ったるいお香の香りで、大方狛治の推測通りの場所に連れてこられたのだと察する。

体は軽いのだけど、脳まで溶かしそうな強烈な臭いで気分が悪くなりそうだ。

カナエさんは無事だろうか
これから、どうするつもりだろうか



「おや?お目覚めかな?」

背筋が凍るような鬼の気配と同時に、飄々とした甘ったるい声が鋭く聞こえた。

あまりの衝撃に見開くと虹色の瞳が眼前にあり、あまりに突然の事で息をのんだ。

「ふぅん…可愛い顔をしているね」
「…!」

驚いて声も出ない。
でも、その虹色の瞳には『弐』『上弦』と書かれている。
虹色の奥がおぞましいと思うほどに真っ白で波のない感情。

感じることを知らない
感じる事への知的好奇心と
観察眼で人を真似て仮面をかぶる鬼

「あれ?まだ声って出せないんだっけ」
「…」
「まぁ、いいや。俺は童磨。ひょっとして猗窩座殿から聞いてるかな?俺の事。
やっぱり、君は少し前に嗅いだ人間の女の子の匂いだね」

声など聞かせてなるものか。
まだ、わたしは本調子からはかけ離れているし
ここで体力を使うわけにはいかない。

この気に触わるような物言いは
確かに狛治が煙たがる相手だと思った。

わたしの事を鬼側はあまり知らないらしい。

それはそうだ。わたしは始祖には見えない存在なのだから。

「そうかぁ…。しかし、君は猗窩座殿と同じような目をするね…
一緒に居るからなんだろうね。桜華ちゃん?」

輪郭を撫でてくる大きく骨ばった掌は氷のように冷たい。
嘲笑すら無意識か、頬を包んだり髪を撫でたりしながらこちらの反応を観察している。

動揺を見せてはいけない。
少しでも気を緩めてしまえば…
最近になって忘れてしまったあの黒い記憶が噴き出してきそうだ。

意図して平静を保とうとするのに体がこわばる。

「いいなぁ…猗窩座殿が羨ましいよ…。
こんなに気丈で綺麗な女の子とずっと一緒に逃げていたんだもんね」

ただ、強いだけならまだマシだったかもしれない。

この鬼は狛治や黒死牟と全く違った種の鬼。

武ではない。
ただの『鬼』としての才能に尖った鬼で
女性慣れしているし、
女性から寄ってくるのが当たり前だと思っている種の男だ。
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