第1章 unlucky men
その時、正面から、するりと細い腕が伸びてきた。
真っ白な指は、俺の手首の上でくるくると踊る。一瞬のうちに、外科医のように、鮮やかにチェーンを留めてみせた。
「……不器用」
ほんの小さな声が聞こえた。
華奢な指がひっこめられる。
「……ありが、とう」
呆然のうちに、ほとんど反射的に言った。目はブレスレットに固まったまま。
ニノによって留められたブレスレットは、何故かさっきより輝いている。
「気に入ってもらえた?」
「……うん、とっても」
「それならよかった」
大野さんは嬉しそうに首を竦めた。けれど、その嬉しさの陰にあるのは、決してプレゼントによるものだけじゃない。そのくらいなら、鈍い俺でも分かる。
だから、俺も笑い返した。
安心の素振りの、お返し。