第6章 ある夏の夜※
雅は
ドリンクを作っている男に「代わるよ」と言った
男が席を立つと
雅は空いたスツールに座り
氷の入ったグラスにブランデーを注いで愛子の前に置いた
「ありがと」
「…ハイ…ナナはコッチね…」
『……』
「…じゃ…乾杯しましょ♪」
グラスを合わせると
愛子はブランデーを一気に飲み干した
「…愛子さん…今夜も飲みっぷりいいっスね〜」
そう言いながら
雅はブランデーを注ぎ足した
ナナが自分のグラスに入った茶色い液体を恐る恐る飲んでみると
それはウーロン茶だった
ホッとした拍子に目が合った雅が
悪戯そうに微笑んだ
普段のラフな服装とは違う
スーツ姿の雅は
自分の知らない大人の男性のように思えた
けれど
笑った顔はいつもの雅のままで
ナナは少しだけ安心した
「……それにしても……愛子さん…何このサプライズ…」
「…私……ナナちゃんがこの店初めてだなんて思わなかったのよ〜……ホラ……前に会った時…雅ちゃんと仲良さそうに歩いてたし…」
「…あー…あの時か……フフ……俺のお客様かと思ったって事?」
「…そうなの……でも…お客様じゃないってコトは……2人はそーゆー関係ってコトなのね?」
『……?…』
「…クスクス……分かってるワ…ナナちゃん……隆司には内緒にしといてあげる♡」
愛子はウインクすると
再びブランデーを飲み干した
ポカンとするナナの顔を
雅は笑いを堪えながら見ていた
その時
背後から低い声が聞こえた
「……愛子さん……こんな時間に未成年連れ回しちゃダメでしょ…」