第1章 夢
遠くの方から人々の騒めきが聞こえてきた。
街が近づいている証拠だ。
ここまで来たってことは、あと半分くらい。
頑張れあたし!!
自らを激励しつつ、街の入り口を抜けてそのままノンストップで駆け抜ける。
いや、駆け抜けようとした、その時。
「おい、アウラ!」
よく聞いた声と共にいきなり腕に激痛が走った。
「いっっっ!!た!!なに!?」
涙目で振り返るとそこにいたのは、赤い髪のガッチリとした体躯の青年。
一瞬で眉間にシワがよるのが自分でもわかる。
「あんたね、いきなり腕掴むのはやめてっていつも言ってるでしょ!腕抜けるかと思ったよバカ!!」
一気にまくしたてるあたしに臆するようでもなく、赤髪の青年──ライは呆れたようにこちらを見た。
「お前まだそんな格好してんのかよ。ちっとは女らしくしたらどうなんだ??男みてェ」
いつもならうるさい!と声を荒げるところだけど、そう言われてふと自分の格好を見てみる。
確かに、男みたい。
ダボっとした服を着てあえて体型を隠し、長い髪の毛は前髪以外全部帽子の中に詰め込んでいる。おまけに化粧っけのない顔と、隠すまでもない胸が余計に…。
「…じゃなくて!男に見えるようにしてんの!朝からなんなのよ。こっちはあんたみたいに暇じゃないんだから」
腕をはなせと言わんばかりにキッと睨みつけると、あまりの剣幕にライも少し怯んだようだった。
気にしてる胸のこともあって言葉が鋭くなるのは仕方ないことだ。それに、はじめに喧嘩ふっかけてきたのはあっちだし。
なんならこっちは腕を痛めてるんだから、一回くらいひっぱたいても文句は言えないくらいよ。