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桃紅柳緑【鬼滅の刃】【R18短編集】  

第8章 赴湯蹈火 【煉獄杏寿郎】3 完


煉獄家も宇髄もいろいろな手を使って捜したが、あの派手な金髪を見たという情報が多すぎてどこへ行ったか分からなかった。杏寿郎は隠し立てすることなく、色々な友人に駆け落ちするにはどうしたらいいか相談していた。明朗快活な性格の杏寿郎の事を好ましく思っている信頼できる人がたくさんいて、力になってくれていた。



十年後 冬

宇髄は千寿郎を伴って瀬戸内の山間の村に来ていた。

もともと温暖な地域だが、この年は雪が多く、この日も雪がちらちらと舞っていた。

2人は野良仕事をしている人に道を尋ねながら、目当ての家の前に着く。
あやは家の前の畑の世話をしていたが、向こうから来る2人組を見付けると、ほぅっと白い息を吐いて着物の裾の泥を綺麗に払い、近づく。

「天元様、いつかいらっしゃると思っていました。」

「おぅ。久しいな。元気そうじゃねえか。相変わらずいい女だなァ。・・・・・煉獄はいるか?」
宇髄の後ろにいた千寿郎もあやの方へ向き、軽く会釈をする。

「主人は昨夜から山へ熊を狩りにいっています。そろそろ戻ると思います。・・・どうぞ。」

2人を縁側へ通し、あやはお茶の準備をする。懐にはそっと懐刀を忍ばせる。

程なく家の裏手の山の方から足音が聞こえ、杏寿郎が熊を担いで帰って来た。

「あや。戻ったぞ。」
杏寿郎はどさっと熊を下ろし、手を洗って水を飲む。

「・・・杏ちゃん。」
杏寿郎はあやが持って来た手拭いで口を拭く。あやの様子から何が起きたか大方察した。

縁側へ回ると先に口を開いたのは宇髄だった。
「よォ、煉獄。探したぜ。お前、体が一回り大きくなったんじゃねぇか?」

「宇髄。君は変わっていないな。相変わらずの色男だ。・・・ここでは秋冬は山でクマやイノシシを追いかけて、夏は海に出るからな。自然とこうなった。」
杏寿郎は腕を拡げて自分の体を見ながら言う。
「・・・君、本気で探したか?思っていたよりも遅かったぞ。」

「東京にいる時よりも生き生きしてるじゃねぇか」と言いながら、宇髄は静かに袖から銃を出して銃口を杏寿郎に向ける。

「俺が虚仮にされたまま黙っていると思ったか?」

杏寿郎は別段驚く様子もなく、いつもの笑顔で返す。
「いいや。思っていなかった。腕の一本位は覚悟しておいたが、それでは足りないようだな。」
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