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桃紅柳緑【鬼滅の刃】【R18短編集】  

第12章 ※炎炎 【煉獄杏寿郎】2


暫くそれを楽しむとお互い抱きしめ合った。ぎゅっと腕に力を入れる。少しの沈黙があって、あやが鼻をくすんくすんと鳴らす。

「あや?」

「・・・杏寿郎ごめん。幸せでまた涙が出てきちゃった。」

「謝るな。俺は君に辛い思いをさせたな。」

あやは慌てて体を少し離し、俺の顔を見て言った。

「ううん。辛かったことを思い出したんじゃなくて・・。嬉しいの。またこうして出会えたことが。」

あやはいつもこうだった。泣き虫だけど強い。慰めているつもりが、俺が慰められていて心を軽くしてくれる。

「確かにそうだな。」

おれはまたあやを抱きしめる。あやもおれの首筋に顔を付けて、すうっと息を吸った・・・ん?吸った?

「・・・待てあや。俺は汗臭くないか?」

おれは慌ててあやから体を離そうとしたが、ぎゅっと抱きしめられて離してくれない。

「ふふふ。私、杏寿郎の汗の匂い結構好き。臭くないよ。胴着の匂い。」

「いや、良く分からんが・・・。では君のも嗅いでみるぞ。」

「きゃ~!それはやめて。」

「胴着の匂いなんだろう?嗅がせてくれ。」

あやは慌てて俺の体を押しのけて、離れる。そして目が合うと笑う。


「わははは。俺たちは何をやってるんだ。」

「・・・だね。・・・仕事しよっか。」

「・・・そうだな。」

そう言うとまた目を見合わせて笑い合い、そっと触れるだけのキスをして、お互いの仕事に向き合った。

あやとはいくらでも一緒にいられる。ふざけ合ったり、お互いを慈しんだり、真剣になったりととにかく楽しい。

4時前になると急にあやは真面目な顔で、

「奥さんが待ってるから帰りなさい。杏寿郎。」

と言い、帰らされた。

帰る前にもう一度手を繋いで抱きしめ合って、数回のキス。体を離して見つめ合う。そして最後に繋いだ手をぎゅっと握ってそっと離す。

「また月曜日に。」

「うん。また月曜日。」

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