第2章 Messiah【レムナン】
「……ありがとう。レムナンは優しいね」
「そ、そんな……僕は、思ったことを言った、だけです」
唐突に褒められて戸惑ってしまう。
僕を助けてくれた、かっこいい女性の人。
それだけで憧れの対象になるのに理由は充分だった。
『まもなく、空間転移を開始致します』
ポーンと軽い音が鳴って、LeViさんのアナウンスが聞こえる。
「もう空間転移か、早いね」
「あ、あの、空間転移って、なんですか……?」
「この船は宇宙を漂ってるだけだから、放っておくと惑星に衝突しちゃうの。だから、そうなりそうな時は空間転移をしてぶつからないようにするんだよ」
「そうなんですか……!で、でも、空間転移の時って、起きていて大丈夫なんですか……?」
「自動的に眠くなっちゃうから、共同寝室とか個室のベッドとかで寝るんだよ。レムナンはさっき個室あげたし、そこで休めばいいから」
「分かりました、ありがとうございます」
『ツバサ様、レムナン様。空間転移の時間が迫っておりますので、お早めにお戻りください』
「ん、分かった。もう戻るから。じゃあまた明日ね、レムナン」
「はい、おやすみなさい……ツバサさん」
ツバサさんと別れて、隣同士の個室へそれぞれ入る。
食堂の出入口から一番近い僕の部屋。
中は何人か入っても充分過ごせるくらいのスペースが保たれていた。
備え付けのベッドに入って毛布を被る。
今日は、色んなことがありましたね。
ツバサさんと出会って、囚われていた僕を助けてくれました。目の前で何が起きているのかその時は現実離れしていて全然理解が追いつかなかったんですよね。
出会って間もないツバサさんの手を取って、一緒にあの地獄から逃げて、この船に乗せてくれて。
感謝してもしきれません。
だんだんと瞼が重くなる。空間転移の時間が来たらしい。
明日からの生活を楽しみにしながら目を閉じた。