第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
――22:01 渋谷Cタワー
「――【鵺】」
虎杖たちが渋谷Cタワーに到着すると、伏黒はすぐに影から【鵺】を呼び出した。
【鵺】は低い位置で旋回し、なぜか詞織の傍らに留まる。その頭を詞織が撫でると、気持ちよさそうに彼女の小さな手のひらに頭をすりつけた。
そういえば、順平が「式神は主人に似るんだって」と言っていたな。
順平の【澱月】も性質は穏やかだが、ここ一番で奮い立ち、果敢に立ち向かっていく姿は主人と似ている。
伏黒の式神も主人に忠実で真面目。どんな状況でも物怖じすることなく敵に立ち向かい、主人である伏黒をサポートする。
そして……伏黒の式神も基本 詞織が大好きだ。こういうところを見ると、「式神は主人に似る」というのも、確かにその通りだなと思える。
「【鵺】」
伏黒の呼びかけに、【鵺】は詞織から離れ、頭を切り替えるように一つ鳴き声を上げた。
「ユージ、猪野さん、気をつけて」
「【鵺】、二人を頼んだぞ」
【鵺】の足に真希からもらった頑強なワイヤーを結えて準備を終えると、猪野が背に乗り、虎杖もワイヤーに捕まる。
真希から使い勝手がいいと勧められたものだ。
【鵺】は猛スピードで屋上へ向かっていった。
ぐんぐんと飛び上がって屋上に到達すると、四人の人間が驚いた表情でこちらを見上げる。おそらく、【帳】の基を守る呪詛師。
虎杖は素早く屋上へ降り、【鵺】と連携してワイヤーを呪詛師に絡める。旋回する【鵺】の翼に弾かれ、小柄な男が屋上から転落した。ニットの男が老婆を庇うように抱えて逃れた。
【鵺】から飛び降りた猪野が屋上の床に刺さった【帳】の基に駆け寄った。パキッと乾いた音が聞こえる。