第48章 混乱極まるラプソディ【渋谷事変】
――21:15
東京メトロ 明治神宮前駅 地下4階
冥冥と合流した虎杖は、先ほどの呪霊との戦い、そして呪符で巻かれた杭を破壊したことを話した。そのおかげで、“術師を入れない【帳】”が上がり、地下五階へ行けるようになったのだ。
軽快な動作で冥冥たちと改札口を飛び越えるが……不意に虎杖は憂憂を振り返る。なんで あんな小さな身体で大斧を背負い、あれほど軽い身のこなしで走れるのか。
「すごいね、虎杖君」
そんなことを考えていると、不意に冥冥に声を掛けられ、「何が?」と走りながら首を傾げる。
「正直な話、もう少し手こずると思っていた。君、もう充分 一級レベルだよ。術式なしでここまでやるのは日下部以来じゃないかな」
日下部――二年の担任の日下部 篤也のことだ。この任務に就く前に、一級術師の七海や禪院家の当主の直毘人と顔合わせは澄ませている。
日下部は高専の教師ということで見知った仲だ。確か、【シン・陰流】という結界術を使用できるようだが、これは技術であって術式ではないのだと五条から教わった。
いつも気だるげに棒付きのキャンディを舐めていた印象が強いが、すごい人なんだな。
「でも、ツギハギじゃなかった。もしアイツが相手ならこうはいかなかったよ」
「姉さまからの褒誉(ほうよ)です。素直に受け取りなさい」
ギロリと憂憂に睨まれ、「アザッス! 光栄です!」と慌てて礼を述べる。
冥冥が手すりに腰をかけて滑るように、虎杖はそのまま地面を蹴ってエスカレーターを飛び降りた。遅れて憂憂も階段を下りてくる。
地下五階に辿り着くと、そこには誰もいなかった。おかしい。逃げた一般人たちは地下五階に集まっているのではなかったのか?