第43章 それはとんでもないトロイメライ【呪術廻戦0】
「今年の一年は粒揃いと聞いたが、なるほど。日下部さんが受け持っているのか」
特級被呪者――乙骨 憂太。
突然変異呪骸――パンダ。
呪言師の末裔――狗巻 棘。
「そして、禪院家の落ちこぼれ――禪院 真希」
夏油は顔を歪ませ、真希を見て嘲笑する。
「テメェ」
「発言には気をつけろ」
眉を寄せて凄む真希を、夏油が底冷えするほど冷ややかな目で見下ろした。
「君のような猿は、私の世界にはいらないんだから」
その言葉に、乙骨は反射的に夏油の手を振り払う。
「ごめんなさい。夏油さんの言ってることはまだよく分かりません。けど……友だちを侮辱する人の手伝いは僕にはできない!」
「すまない。君を不快にさせるつもりはなかったんだ」
きっぱりと言い切ると、彼は申し訳なさそうに眉を下げた。
「では、何が目的でここに?」
「星也君、ちょうどいい。もう一度 君に会いたかったんだ」
星也の問いに答えることなく、夏油が彼に手を差し出す。
「私と来てくれないかい? 君がいてくれれば心強い。心細いなら星良ちゃんも……」
「僕の答えは変わりません。非術師を皆殺しなんてあり得ない。僕は……僕ら呪術師は、非術師を守るために戦う。あなたもそうだったはずです」
まるで夜の星空を切り取ったような瞳から、乙骨は目を逸らせなかった。
「ふふ、残念。また振られちゃった」
「話を戻します。なぜ ここに?」
再びの問いかけに、夏油が怪しげに口角を上げる。
「宣戦布告さ」
そう言うと、夏油が一同を振り返り、声を張り上げた。