第56章 この手に掴むデテルミナート【渋谷事変】
更地になった景色のヤバさに真人(分身体)がテンションを上げていると、思いがけない人物と再会した。
吉野 順平――かつて遊んだ玩具だ。口ぶりからして、隣にいる女も虎杖と親しいのだろう。
ちょうどいい。
この二人の死体を晒し、虎杖 悠仁の魂を折ってやろう。
呪力を纏った拳で順平に迫る中、キンキンッと鬱陶しいくらいに釘が飛んでくる。だが、釘の女との距離を詰めれば、今度は順平の【澱月】が触手で牽制してきた。
こちらの両手を警戒している。あのとき戦った特級術師や虎杖、順平から警告を受けているのだろう。
しかし、自分は分身体だ。本体のように自分の形は変えられても、改造人間をイジったり他者の魂に干渉したりはできない。
勝手に神経をすり減らしてくれて助かるよ。
右腕を長く伸ばして釘の女に放つ。
「うぁ……っ⁉」
「釘崎さん!」
順平が【澱月】に命じて釘の女を受け止めた。その隙に反対の手を棍棒のように作り替え、懐に入り、強かに打ちつけてやる。
「がっ……!」
よろめきながらも立ち上がる順平に、入り方が甘かったかなと反省した。
そして、自分の身体をハリネズミのように作り替え、その棘を足に集約し、順平と釘の女に向けて蹴りを放つ。釘の女が金槌を、順平が警棒型の呪具を振りかぶった。
バキッと棘が折れる音が鳴るも、釘の女や順平の身体はすれ違いざまに棘に穿たれ、鮮血が弾ける。