第6章 六夜目.その御伽噺の続きを私達はまだ知らない
ハンサムが、チーターに向かってそれを放り投げる。一発目は、敵が気付いていなかったこともあり大ダメージ。二発目と三発目も、ダメージを与えることに成功した。四発目が炸裂する前に、チーターが家から飛び出し回避されてしまう。
ハンサムの手持ちグレネードは、そこで尽きた。
『…っ、』
(美味しいところだけ攫うみたいで、申し訳ないけど)
エリは持っていた唯一のグレネードを、飛び出して来た敵に向かって投げつける。その攻撃は、僅かに残っていたチーターの体力を削り切ったのだった。
WIN!の文字が画面いっぱいに映し出される。エリは、長い溜息を吐いて勝利の余韻に浸った。
その余韻もつかぬ間、通知の嵐が押し寄せる。幾多ものフレンド申請であった。
チーターに見事打ち勝ったエリに興味を持ち、見学していたプレイヤー達が送ったのだろう。ハンサムにはこれ以上の申請が行っているに違いない。
エリは、何度も何度も拒否のボタンをクリックする。淀みなくマウスを押していた指が、ピタリと止まった。
[ハンサム さんから、フレンド申請が届いています]
[承認] [拒否]
エリはその画面をしばらく見つめた後、カーソルを動かした。