第22章 武将達の秘め事④
「小娘の話が聞けぬなら、今宵は皆の”初めて”の話でもするか?」
「は?光秀さん、あんた…また訳分かんないこと言って…」
「光秀っ、お前なぁ…そんな話、御館様の前で出来るかっ!」
「ふっ…面白い。聞かせろ」
「お、御館様!?」
「俺は嫌ですよ。何が楽しくて野郎どもの前で自分の筆下ろしの話なんてしないといけないんですか…大体、そんな昔の話、忘れましたよ」
「くくっ…何だ、忘れたのか、家康?ならば俺が話してやろうか?貴様の筆下ろしは俺が……」
「えっ!?えええっ…」
(まさか御館様が家康の初めての相手を!?いやいやいや…そんな訳あるかっ…男色も武将の嗜みとはいえ、御館様にそんなご趣味はないはずだ!今も、昔、も…?)
混乱する秀吉の頭が爆発寸前になりかけていると、家康が心底嫌そうに口を開く。
「ちょっと信長様!紛らわしい言い方しないで下さいよ」
「ほぅ…お前を男にしてやったのは俺だぞ?」
「だからその言い方!あんたは俺で遊んでただけでしょうが…」
(御館様が家康を弄んで…!?お、男にした、って…それはそういう…あれなのか!?)
いかがわしい妄想で頭がいっぱいになってきた秀吉が秘かに身悶えているのを見た光秀は、隣で必死に笑いを堪えている。
「光秀、てめぇ、笑ってんじゃねぇ!あ、あのぅ、御館様…家康の初めてはその、御館様がお相手を…?」
(俺の御館様が男と…相手が家康とはいえ、男と交わり…あぁ…)
「ちょっと秀吉さん!そんな訳ないでしょ!男相手の筆下ろしなんてあり得ないでしょ…そりゃ、信長様にはまぁ、色々と教えられたけど…」
「色々と……」
「おい、秀吉、つまらぬ想像を致すな。で、貴様はどうなのだ?」
「へ?お、俺ですか!?俺はそのぅ…御館様にお聞かせするほどのことは…」
「言え」
有無を言わせぬ信長の視線に、逆らえるはずもない。
「俺はその、元々平民の出で武士ではないので元服の儀などもしていませんし…年若い頃には物売りとしてあちこち旅をしていましたので…初めてはその、旅先の宿で、年上の遊女と、そのぅ…」
「へぇ、遊女の手解きでか…やるな、秀吉。まぁ、筆下ろしの相手は経験豊富な年上の女と相場は決まってるが…」
知ったような風にうんうんと相槌を打つ政宗を、秀吉は恨めしげにジトっと睨む。
「っ…そういう政宗はどうなんだ?」
