• テキストサイズ

歌姫のguardian

第2章 ルフの導き


(ジャーファル様はよく、白羊塔で徹夜でお仕事をなさっているって聞いたけど、本当かしら・・・?)

私は出来た果実水をこぼさないように気をつけながら、
白羊塔に向かっていた。

外からは虫が歌うように鳴く声が聞こえて、とても安らかな気持ちになる。
扉の前まで来ると急に緊張しだしたけど、せっかくここまできたんだからちゃんとしなきゃ。

私は軽く呼吸をして、扉を数回叩いた。

「・・・はい、何か御用ですか?」
中からは疲れているらしい、か細い声が聞こえてきた。
「夜分遅くに失礼いたします。入りますね」
私はそう返事し、ギイと鳴る扉を開けて中に入った。


中は薄暗く、明かりが少ししかついていなかった。
明かりの方向へ向かうと、机の上に置いた書類を片付けているらしいジャーファル様がいた。
「貴女は、夕方お会いした・・・」
「はい、ミルカと申します。私などを助けてくださり、さらには送って下さって本当に感謝しております。ありがとうございました」
「いえ、いいんですよ。ところで君は、こんな時間に何故ここへ・・・?」
「お礼を持ってまいりました。パパゴレッヤの果実水です。不必要なようならお下げしますので・・・」

やっぱり失礼よね、と心の中で思い返し、下げるつもりでそう伝えた。しかし彼は、
「いえ、とてもありがたいです。ありがとうございます、ミルカ」
笑顔で受け取り、すぐに飲んでくれた。
ごくごくと飲む彼を見ながら、私は顔を少し赤く染めてすぐに下を向いた。何故なら・・・


とても自然に、名前で呼ばれていたからだ。

/ 68ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp