第23章 上弦と力
「申し訳ございません……お叱りは後でしっかり受けますので……少し寄りかからせていただいて……よろしいでしょうか?」
「聞くことでもあるまい……少し休憩するといい。皆を助けてくれてありがとう」
先ほどまでと打って変わった杏寿郎の優しい声は更紗の全身の緊張を解し、張り詰めていたものが全て流れ出ていった。
「ありがとうございます……あの、上弦の鬼は……皆さんは無事ですか?誰も……いなくなってない?」
その質問に杏寿郎が答える前に、更紗の上半身に優しい衝撃がもたらされる。
何が起こったのかとゆっくり周りの状況を確認すると、何より望んでいた光景が瞳いっぱいに広がっていた。
「誰も死んでねェ!俺も玄弥も……時透も悲鳴嶼さんも全員生きてる!誰一人欠けちゃいねェ!」
「ごめんね!俺たちを治すためにこんなにさせちゃって……ありがとう、更紗ちゃんのお陰で生きてるよ」
実弥が玄弥の頭を片手で抱き寄せながら、もう片方の腕で更紗の頭を優しく包み込み、無一郎が肩を抱き寄せ、行冥は力なく床に投げ出している手を握ってくれていたのだ。
「よかった……この部屋に入ってきた時……皆さん重傷で……誰かいなくなっちゃうんじゃないかって……不安で怖くて……本当によかったです」