第20章 柱稽古とお館様
更紗の立ち位置は極めて難しい。
治癒の能力を考えると後方部隊が望ましいが、柱となった力量を考えると後方部隊では存分に剣技を奮ってもらえなくなるのだ。
「そうだな……基本的に俺が近くにいるつもりだが、ことによればそれも叶わん状況になる可能性も十分に考えられる。更紗、君のそばに柱がいない場合、神久夜に限らずとにかく近くにいる鎹鴉から柱の場所を教えてもらい、誰かと合流することを第一優先にしなさい」
柱になっても柱の手を借りなくてはいけない現状が情けなくなるが、どう考えても柱の末席に加わった自分1人の力では上弦の鬼を倒すことは出来ない。
それならば杏寿郎の指示が1番理にかなっているので、大人しく従うことにした。
「かしこまりました。その前に上弦の鬼と出くわした時は、近くの鎹鴉に場所や状況をどなたかに伝えていただきますね」
それが1番避けたい状況だが、そうなった時は更紗の言っていること以外手立てがないのでそうする他ない。
「そうしてくれ。誰かが合流するまで何がなんでも持ち堪えろ。鬼に君の力を渡すわけにはいかないからな」
想像するだけで痛みを伴うので考えたくもないが、指一本だって鬼に食べさせてはいけない。
戦場で鬼が陽の光を克服してしまっては鬼殺隊が圧倒的不利になるからだ。