第78章 昔からの憧れ
次の日にはアマモリくんのところに行って、とんとん拍子で契約を済ませた。
「一応管理はしとったからライフラインは確実や。田舎やけどネットワークは優秀やし、風呂トイレとか水回りは最近工事入って新しくなったし問題ないと思う。あと傷んでるところはリフォームするんがおすすめやけど…。」
「いいの!私、これくらい古いのがいいわ。」
アマモリくんは困ったように後頭部をガシガシとかいた。
「あ、あのー…ほんまにここに住むん?」
「うん」
「キリキリちゃんの収入やったら問題ないし、全然会社的にはOKやけど…俺は心配や。
ほんまに何もないで。お店もない…移動販売のワゴンが月1来るかどうかや。ネットショッピングも届くの時間かかるし、バスも電車も昼と夜に一本ずつや。隣町に行くには車がいるで。役所も郵便局も病院も遠いし、赤ちゃんの診察どうするんよ…。」
「素敵じゃない。私、こういうのが理想だったの。」
私は新たな家を見上げた。日本家屋とはいえ、小さい。それに時代に置いてイカれたような設備のおかげでそんなに高くなかった。私1人なら十分だ。
言うならば、最後の贅沢か。
「海の見える家で暮らしてみたかったの。それに人がたくさんいる都会は、私には合わないみたい。」
「……そこに不死川がいたらあかんの?」
「…いてほしいけど、もうこれ以上私のわがままに付き合ってもらえないから。」
アマモリくんはグッと拳を握りしめた。
「不死川はキリキリちゃんのわがままに付き合ったんとちゃうで。キリキリちゃんが好きやったから、それで一緒にいたんやで。」
「……」
「キリキリちゃんのどこがわがままって言うんよ…。好きな人と一緒にいただけやんか…。」
アマモリくんは悲しげに言った。
「いいやんか。ちょっと喧嘩したって、悪いことしたって、許されないことしたって、一緒にいたいならそれでいいやん。
それがわがままなら、キリキリちゃんはこの先ずっと1人でいることになるで。」
この先、ずっと…
うん、
でも
「私はもともと1人だった。鬼殺隊に入ったのが少しおかしかったんだよ。これでいいの。」
「そんな…!」
もう、この先も長くはない。