第25章 不滅の心
陽明くんは髪の毛をかきあげてため息をついた。
「山本先輩がどう出るかは一か八かだったけど、悪い方に出たね。あなたが無惨と何かしらあったであろうことを学園長…産屋敷に言ったらしい。それから大騒ぎだよね。」
「そうか!警察に言ってないだけで騒ぎになってるにはなってるのね!!」
「ねえ、逆にどうして自分がいなくなって騒ぎにならなかったと思うの?」
「え…??だ、だって、春風さんに電話したし。」
陽明くんが苦笑する。
「まあ…俺としては、山本先輩が黙っていてくれるのが一番良かったんだけど、そうはいかないよねえ。こちら側の焦りが無惨に伝わってしまっているし、無惨もあなたがまさかまさかの逃亡を果たして焦っているわけですし。」
「…申し訳ない。」
「いえ、全然。むしろこうなって良かったんですよ。無惨は産屋敷と神社に夢中だったわけですが、その注意を一時的にも逸らせた。産屋敷はあなたがいることで下手に動けなかった。
つまり、今は硬直状態にあるわけです。」
ふむふむと頷く。
「見たでしょう、無惨の家で。あなたが持ってきたその紙が何よりの証拠です。」
「…うん。」
「……このままじゃいけないんだ。だからこそ、俺らは勇気を持って動かないといけない。」
「…そうだね。」
「いいですか。本当に俺についてきていいんですか。」
私は迷わず頷いた。
「私は私の信じる道を進む。」
「…格好いいですね、本当に。」
陽明くんが言うので、そんなんことないと首を横に振った。
「陽明くんがいるからだよ。私、雨の中がむしゃらに走ったけど神社に君がいるかなんてわからなかった。陽明くんの姿が見えた時すごくホッとしたよ。」
彼はしばらく沈黙した。
「……俺は、諦めてたんです。」
「?」
「…俺が何をしてもどうにもならないから。」
ぽつぽつとまとまりのない言葉を吐き出していく。
「俺に見える未来は、変わることがないんです。何をしても無惨を止められないだろうって…もういいやと諦めていた。でも、あなたは絶対に諦めなかった…ですよね。
だから俺もう一度やってみようと思いました。」
「…陽明くん」
「昔は俺のせいで数え切れないほどの人が死んだ。だから逃げたくないんだ。」
陽明くんの目には確かな決意が灯っていた。私はじっとその目を見つめていた。