第15章 夏に溶けて
側に気配を感じて目を覚ました。ゆっくりと起き上がる。窓の外はもう真っ暗で、部屋の電気がついていた。
「……大丈夫か」
「………」
ふわふわのソファーで寝ていた。体には薄い毛布がかけられている。
目の前にいたのは、顔が傷だらけの男だった。ひどく不安げな顔をしていた。
「…………………………………わ、実弥じゃん!!!」
「おっせ」
「あれ?春風さんは???」
キョロキョロと見渡すもいない。気配からするに、この家にもいないようだが…。
「あの人は仕事に行った。明日朝イチで出張なんだとよ。」
「わ~!そうなのか、挨拶できなかった…!!」
「んで、お前泊まらすわけにもいかないから迎えに来たんだよ。そしたら『起きるまで寝かせてあげて』って合鍵貸してくれたんだよ。気が済むまでいろってさ。」
「……対応が大人の中の大人だ…」
「それは同意だな。」
二人で頷き合う。
「で?具合どうなんだよ。」
「気持ち悪い。吐きそう。ていうか吐く。うっぷ。」
「は!?おいちょっと待て!!!この家のソファーは弁償できねえぞ!!!」
あぁ確かに。氷雨家お金持ちだからなぁ…。
「………あ、でもそんなに急ぎじゃないかも。ムカムカするだけ。」
「……そうかァ。」
実弥はホッとしたようだったが、私にビニール袋を寄越した。
「お前、立てるか?」
「…無理かも。横になって良い?」
「ん。」
「あ、でも遅くなるの嫌だよね。」
「時間は気にしなくて良いんだよ。」
またソファーに寝転ぶ。
すると幾分か楽になった。
「私、もっと頑張らなきゃだね……。」
「お前は頑張ってるよ。」
「……。」
実弥が私の頭を撫でる。
「…それ良い。もっとして。」
「ん。」
優しい手付きが気持ち良かった。ホッと安心することができた。
私がまたうとうととする頃、実弥が帰ろうと言うので私は頷いた。