第79章 晩餐
「私じゃ、参には勝てないかな? 一人じゃ無理だと思う?」
「⋯⋯無理ですね。そもそも、遭遇出来ないでしょうし、竈門君から聞く限り、煉獄さんが明け方まで足止め出来たのも、上弦の参が、鬼にならないかと、しつこく勧誘したからだ、と」
「⋯⋯そっか。分かった」
甘露寺は、歯を食いしばって俯いた。宇那手は、ハッと息を呑んだ。
(甘露寺さんは、煉獄さんの継子だったんだ!)
「機会は必ずあります」
宇那手は、付け加えた。
「総力戦になれば、鬼舞辻が女と戦えない鬼を許すはずもない。みんなで倒しましょう」
「⋯⋯そうね。みんなで。⋯⋯勿論、火憐ちゃんも一緒よね?」
「はい、勿論」
宇那手は、微笑んだ。
「甘露寺さん、ご飯、食べませんか? みんなで」
「ご飯!! 食べる!! 食べまーす!! 誰が来るのかな?!」
「玄弥君と、無一郎君と、桜里さんは誘います。竈門君は修行中らしいので、五人で食べましょう」
宇那手は、甘露寺のコロコロと変わる機嫌が面白くて、つい笑ってしまった。
夕食の席は、宇那手の予想に反して地獄だった。
玄弥は恥ずかしがって喋らない。その事に甘露寺が傷付き、始終泣きそうな顔をしている。時透は、我関せずといった具合で、桜里は時透に対しての悪意を全開にしていた。
言い出しっぺが責任を取るべきだと、宇那手は、なんとか話題を引き出そうとした。
「そういえば、竈門君の同期は、一人も欠けずに仲良しですが、玄弥君はお喋りしないんですか?」
「⋯⋯おれ、アイツに⋯⋯炭治郎に腕を折られたんッスよ」
「はあ?! え?! 竈門君が?! あの子、そんな乱暴者じゃないと思うけれど。君、何をしたの?」
「⋯⋯最終選別の後、案内役の女の子を殴っちまって」
「ええ?! それってつまり⋯⋯」
甘露寺は箸を取り落とした。時透も、顔を顰めた。玄弥は縮こまってしまった。
「お⋯⋯お館様のご息女を」
「馬鹿ァ!!」
「何やってるのよ!!」
甘露寺と宇那手は、同時に叫んでいた。時透は箸を折ってしまった。産屋敷家と親密にしていた宇那手は、心底腹を立てていた。
「八歳の女の子を殴るなんて!! 君は鬼ですか?! 勿論謝ったのよね?!」