第59章 伝達
(私は上弦の弐を討って死ぬ。鬼舞辻との戦いまで残れない。誰が最後まで戦える? 悲鳴嶼さんは確実。時透君は? 冨岡さんは火憐さんが、必ず守って残すはず。能力的に見れば不死川さん、甘露寺さん。⋯⋯伊黒さんは⋯⋯。希望込みで竈門君達と、カナヲが残ったとしても、火憐さんの代わりがいない。日の呼吸、雷の呼吸の全ての技を使える剣士が⋯⋯。そもそも、悲鳴嶼さんが脱落した時点で、最初の計画は成り立たない。日の呼吸しか⋯⋯。だからあの子は)
自分の命を張った行動で、状況が打開できるのなら、火憐は両腕を残したいなどと、甘い言葉は書き記さない。命を犠牲にすることも、厭わないはずだ。
直接書かれてはいないが、暗に彼女は、勝利への不安を訴えている。
「失礼します」
扉を叩く音と、声が聞こえた。玄弥の物だ。
(そうだ! 銃弾!!)
この国は至って平和だが、世界大戦の最中、凶悪な武器が次々と生まれている。特に銃。
(確か体内に入ってから破裂する弾丸があったはず! 鬼舞辻も、それなら火憐さんの血ほど警戒しない。鉛の塊程度を、体外に排出しようともしないはず!!)
「玄弥君」
胡蝶は自分で扉を開けた。玄弥は散らかった部屋と、胡蝶の様子に戸惑った。普段の彼女なら、真っ先に怪我と身体の心配をしてくれるのに。
「胡蝶さん?!」
「治療が済んだら刀鍛冶の里へ行って!! 治癒効果のある温泉もあります。柱がいます。彼女に、貴方の担当鍛治職人を紹介してください!! 銃を作れる鍛治職人を!!」
「銃⋯⋯ですか。でもこれは、扱いが──」
「問題ありません」
胡蝶は、思わず笑ってしまった。なんて出来過ぎた話だろう。
「火憐さん⋯⋯水炎柱は、元々猟師です。女性ですが、山に入り、獣を狩っていました。貴方の銃よりも重い、猟銃を扱えます」
「そんなヤツが⋯⋯。そうか⋯⋯。俺はまだ⋯⋯」
玄弥はようやく納得した。炎柱が空席になったその日の内に、女性の隊士が柱になったと聞き、良い印象を持てなかったのだ。死に物狂いで戦っている自分とは、きっと遠い存在だと。元々水柱の継子だと言っていたから、そのつてで就任したのだと思った。
「座ってください」