第29章 羨望と嫉妬※
「馬鹿! 何を考えている?!」
「だって⋯⋯貴方だって私の耳を──」
「もう良い」
冨岡は宇那手をうつ伏せに押し倒し、両手首を片手で掴んで抑え込んだ。
彼は、必死に理性を取り戻そうと、呼吸を繰り返した。今の自分は、鬼に変貌したばかりの者が、身内を喰うのを堪えている様子に似ているだろうと思った。
白い布団に散らばる宇那手の髪を、冨岡は掬い上げた。
「綺麗だ。お前は綺麗なままで良い」
ゆっくりと、蜜壺に自身を押し付けた。飲み込まれて行く度に、宇那手は小さく声を漏らし、身体を震えさせた。以前の様に、痛みに泣くことは無かったが、代わりに別の叫びを堪えている様に見えた。
「火憐、大丈夫か?」
「早く⋯⋯動いてください」
宇那手は、顔を痙攣らせながらも笑った。
「それで⋯⋯楽になるのでしょう? 私も⋯⋯っ⋯⋯貴方も」
「また寝込まれては困る。痛ければ言え」
冨岡は、一気に奥まで貫き、腰を動かした。背後から、無理矢理犯している様な背徳感が、余計に劣情を煽った。
宇那手は、枕に顔を埋めて必死に声を殺していた。そのせいで、余計に冨岡を締め付け、咥え込んでいるとも知らずに。
「うっ⋯⋯っ! ⋯⋯やっ⋯⋯」
「イキそうだ。お前は満足か?」
「そんなこ⋯⋯聞かない⋯⋯で! ⋯⋯あぁぁぁ!!」
宇那手はとうとう派手な嬌声を上げて達してしまった。同時に冨岡も。
彼はしばらく息を整える努力をし、宇那手を抱き起こした。
「何処か痛むか?」
「いいえ」
「なら、風呂に入って、今日は休むぞ」
「い⋯⋯一緒に?」
「もう見せていない場所も、見ていない場所も無いが」
冨岡の言葉に、疲れ切っていた宇那手は、何も返せなかった。されるがまま、横抱きにされ、風呂場まで連行された。