第12章 おつかい
「名前ちゃーんそれじゃ落ちちゃうよー?」
『それは高尾に抱き付けと』
「そりゃ今日初めましての奴に抱き付くのは嫌かもしんねーけどさ、落ちて傷負うよりマシだから我慢して?」
高尾が自転車から降りて押すという案はないのかと、落ちて怪我したくないあたしは仕方なく高尾の腰に腕を回す
距離の近さにテンパって必死に話題を探そうとするが、ほとんど高尾が話してしまったために話題がないに等しい
その中で唯一見つけた話題は自分が先ほど太ったことにより重いのではと気が付いたことだった
『さ、坂道とか辛かったら降りるから!』
「オレそんなか弱くねーよ?ダテに運動部ってわけじゃねーんだからな?」
昨日虹村先輩が言っていた通り、行きは上り坂が多かったが帰りは下り坂ばかりだった
それなら重くても大丈夫かなと思いながら、先ほどお嬢ちゃんが言っていた今月高尾が誕生日なことを思い出す
『高尾』
「ん?」
『お誕生月、おめでとう』
「アドレス知ってんだからどうせなら当日メールで言ってくれよ!」
『直接の方が良いかなぁと思って』
「まぁでもサンキューな!」
『…ドウイタシマシテ』
「片言!?マジで思ってるの?!」
帝光中にはいないタイプのため困ってしまうが、ほとんど高尾が会話してくれたので助かった
そして重い荷物を持って歩くこともなく帝光までこれことも助かったので、色々な面で彼に感謝する
「じゃ、これ荷物な」
『ありがと高尾』
帝光中まで送ってもらったあたしはかなり心臓バクバクだった。恐らく顔も赤くて耳まで赤いだろう
「じゃ、部活頑張れよ」
『うん。ありがとう』
「じゃあな!」
『またね~』
自転車を漕ぎだしてあたしの前から去る高尾
すごい速度で駆け抜けていく後ろ姿を見送り、重い荷物を持ったあたしは帝光中の1軍体育館へと向かった