第58章 守る人と守られる人
もういいかと保冷剤を離し自分で消毒まで済まし、彼にピアッサーを渡す
「え、ええ…」
『早くしろ』
「うー…じゃ、じゃあ失礼するっス…」
耳元で大きくガシャンという音が鳴り、それに驚いたが騒ぐほどの痛みではない
『あー…確かに痛いけど、大騒ぎするほどではないかな』
「オレ不意打ちとかが一番苦手なんスよ…」
『て言うか学校ピアスオッケーなの?』
「友達つけてたっス!」
『涼太友達居たっけ』
「…名前っちオレのことどう見てるんスか」
『わんわん』
「やっぱり名前っちひどいっス!」
言われたことを素直に答えただけなのに騒ぐ涼太を放っておき、違和感がある右耳を触った
彼とお揃いのピアスが爪に当たり小さく音を立て、なんだかくすぐったい気持ちが芽生える
「耳、やっぱり違和感あるっスよね」
『ねー、許可なくあけて雪さんに怒られちゃうかもなぁ』
「…雪さん?」
『ああ、あたしのお母さん』
「お母さんのこと名前呼びしてるんスか?」
『あー…そうね、と言うよりも拾ってくれた人、かな』
そう言えばいつだか大人しかった頃の話をすると言って、結局話してなかったなと果たされていない口約束を思い出す
部屋に窓から風が入ってきてふわりとカーテンが揺れ、あたしと涼太の髪も撫でていった
そのお陰で見えやすくなった表情は驚いたのか目が大きく見開かれており、まつ毛が長いなと場に合わないことを考えていた