第77章 華ぞ咲く$
「この面には俺たちの血と汗が染み込んでるんだぜ」
「それは重々承知していますよ。それよりも、そちらの軟膏、よく見せて頂けますか?」
「色気、食い気より薬ってか?やっぱ変わってんな、蝶屋敷って。ほらよ」
「……ありがとうございます」
鋼鐵塚の発言に納得出来なかったのか、眉根を寄せて軟膏を受け取る胡蝶。
表面上とはいえ、笑顔を保っているのは流石としか言えない。
アオイですら口許が引きつってしまうのだから鋼鐵塚はかなりの曲者である。
それはさておき、胡蝶は軟膏に視線を戻す。
色は薄茶色。
血気止めの類だろうか?
裂傷による怪我が元で、ばい菌が体内に入り死に至ることもある。
呼吸で出血量を制限できるとしても、それが出来る人員はあまり多くないのもまた事実である。
何にせよ、一度実際に使うべきだろうか……?