第74章 君と二人で永遠(とわ)に眠るる
蜜璃は盛大な咳をしたしのぶの背中を摩る。
「何のご冗談ですか、くいな様?」
「あら、当時からよく噂されていましたよ。蟲柱と水柱は恋仲だと」
「誰が……あんな朴念仁と……」
「朴念仁……?」
「いえ、失礼しました。確かに、冨岡さんと任務をご一緒する機会は多かったですけど……それは御館様の采配ですから……」
「では、良いのですね?」
「何を……」
「私は今夜にでも、子を孕むやもしれませんよ?」
それを聞いて、しのぶの顔が一瞬強ばった。
「伝えないのは、思っていないのと同じだと、父がよく言っていました」
「くいな様は、白藤さんを想い続ける彼と一緒に居て、辛くは無いのですか?」
「………そう、ですね。彼は、私ではない何かを見つめる素振りをしている事がありますが……私もどこかで、彼に父を重ねている……だから、同罪です」
「そうですか……」
「しのぶちゃん……?」
「くいな様。どうかお幸せに」
その後、祝言は滞りなく行われ、賑やかな時間はあっという間に過ぎた。