第71章 向かう白、揺蕩う藤色
$$$
「全く、逃げ回るばかりで小賢しい鬼だ」
伊黒は無限城の廊下をかれこれ一刻近く走らされている。
いつもであれば、どこかで休憩を入れたいところではあるが、隣で走り回っている彼女を見れば、そんなことも言ってられない。
「伊黒さん!」
「何だ甘露寺?」
「さっきの琵琶の鬼。どうやったら捕まえられるかな」
「さあな。だが、今の様に闇雲に走らされるのは癪に障る……」
伊黒さんが怒ってる。
でも、何だかいつもよりかっこいい。
「甘露寺?」
「……っあ、はい!!///」
「大丈夫か?顔が赤いが」
「だ、だだ、だだ、大丈夫!!私身体が丈夫なのが特技だから!!///」
甘露寺は額に汗をうかべる伊黒にきゅんとしながら、それを隠そうと、あたふたと腕を動かしながら返事をする。
「っ……、このままでは、捕まえられない……何か……」
「伊黒さん、大丈夫?」