第7章 五虎退の頼み
その子に大広間まで案内してもらう。
また道に迷っていたらしい。戻ろうとして戻れなかったのだ。
道中、その子の名前を聞くと、五虎退だと答えた。
広間に着くと、レンは貰った薬箱を取り出し、五虎退を促す。
五虎退はおっかなびっくりレンの前に座ると、促されるまま傷を見せた。
いつの間にか靄が消えている。
レンはなるべく血を見ない様にしながら、てきぱきと傷の手当てをしていく。
一番大きな傷は横腹の傷だった。刃物で大きく切った様な傷だ。レンは震えそうになる腕をぐっと堪えて手当てをする。
一通り手当てを終えて、大きく息を吐き出した。
ーやっぱり、血は苦手だ。
五虎退はレンを、終始不思議そうな顔で見ていた。
「…何でしょうか?」
レンは気まず気に五虎退に問いかける。
「あ、いえ!その…すみません。」
五虎退は慌て視線を逸らした。
2人の間に気まずい沈黙が流れる。
先に口を開いたのは五虎退だった。
「その、手当て、ありがとう、ございます。
僕、手当て、されたのって、その、初めてで…。
それで、つい…。」
レンは心の中でほっとする。
ーよかった。血が苦手な事がバレたわけじゃないのか。
「問題ありません。
それより、助ける為に私は何をどうしたら良いのでしょう?薬草なら多少集められますが。
こんのすけさんからは、何もしなくていいと言われているので、治す方法を知りません。」
「え?それってどういう…。」
五虎退は面食った顔をする。
レンはこんのすけとのやりとりを掻い摘んで説明すると、五虎退は益々困惑した様子を見せた。
「えっと、まず何から説明したらいいのか…。」
五虎退は、そう言いながら手入れの方法を説明し出した。