第50章 自分の役割
「倉持も外野に飛ばせなかったのは、まずいよな?」
「クソッ。どんだけいいピッチャーだったんだよ。ブランクなんて感じさせねぇいいボールだったぞ。
バッティングピッチャー出来んじゃねぇの?」
120も出ない私がバッティングピッチャーなんかできるわけないと丁重にお断りをした。
「それありかもな。緩いボールをしっかりと捉えて外野まで運ぶていう練習を取り入れるみたいだし、監督に舞ちゃんの事押しておくよ。」
「え、やだやだ。ふざけんなって言われるのが落ちだってば。」
「コントロールの良さならノリ以上だぞ。バッターボックスに立ったやつの苦手なコースに投げ込んでくれれば、いい練習になる。
舞ちゃんの事だから、レギュラー陣の苦手なコース頭に入ってんだろ?」
そうだけど…。
ほんとに練習相手になるのかな…。
役に立つことがあるなら、やりたいけど。
春日一との試合は8-0
7回コールド。
沢村くんの投球内容は良かったし、結城くんの1年生初スタメン初ヒット初ホームラン。さよならコールド。
すごいデビューとなった。
第2試合を観戦した。
市大の天久くんのピッチング、今日はあまり良くないな。
配球表をつけながらそう思った。
試合後、沢村くんか興奮していたから、どうしたの?と聞いてみた。
御幸くんの言ったような試合展開だったらしくて、予言者?!と騒いでいたらしい。
「野球教室みたいだね。私も御幸くんの解説聞きたかったなぁ。」
絶対おもしろいし、勉強になる。
「姉さんもこっちで見れたらいいのに。
御幸先輩、時々バックネット裏の姉さんの事見てて、誰かに話しかけられる度にソワソワして、ナベさんに大丈夫だって止められてましたよ。」
「こら、余計な事言うな。」
知ってる仲良しのおじさま達が、差し入れとか持ってきてくれておしゃべりしてたの見てたんだ。
「心配症の彼氏を持つと大変ですね」
奥村くんがすれ違いざまにそうボソッとつぶやくように言った。
「あいつまで揶揄いやがって…」
「あの人たち、青道のファンなんだよ。特に御幸くんの。入学したときからずっと応援してくれてるんだって。」
学校に見にくる人もたくさんいるけど、あの人達は邪魔しちゃ悪いからって、球場で声援をくれる。
息子みたいだって言ってる人もいたなぁ。
照れ臭そうにそっぽを向いた。
